Earth Rhythms

AYUMI PAUL

​アーティスト

職業は何ですかと聞かれると、大抵、クラシックバイオリニストとして5歳からバイオリンの手ほどきを受け、今は、アーティストして活躍しています、と答えます。私は作曲し、織り、描き、彫刻し、歌い、インスタレーション、リチュアルやパフォーマンスを制作しています。時として、自分の作品を総合的ポエム、または、総合芸術(Gesamtkunstwerk)と説明することもあります。でも、この質問に絶対的に正確であろうとするならば、私の答えは、私は音楽です、になるでしょう。そうです。私は音楽です。そして、私は耳を澄ませます。

 

 

子供の頃、木々や植物そして星々が私によく歌いかけていました。学校では、「空想が過ぎる」と批判され、良くない評価を受けたこともありました。そして、私は徐々に、世界に耳を傾けることを捨て去り、他の人々(主に白人男性)が、そう遠くない過去に想像し、証明したシステムを聴くようになりました。私は、プロのバイオリニストとなり、15年近くクラシックコンサートの演奏で世界中を廻りました。崇高で美しい交響曲をコンサートで演奏できることを楽しんでいましたが、ある感覚に常にとらわれていました。この感覚は同時に疑問でもありました。それは、他になにか聴くべきものがあるにちがいない、というものでした。私が聞き漏らしている、なにか。私が、聞いていない、なにか。私は、より実験的な音楽シーンの様々なアーティスト、ダンサー、ミュージシャン達とコラボレーションを始めました。新しいインスピレーションのたびに必ず出会う新しい音の発見に、暫くの間は興奮していましたが、あの、他に聴くべきものへの思いと憧れがまた沸き起こってきました。そして、ある日、私は新しい音楽を追うことをやめ、長年の音楽製作活動から休息するために、純粋に、一切の目的や願いを求めず、静かに、座りました。そして、静けさのなかで、なにもせずに、そこにあるものを、とても僅かではあるけれど一貫して、私は聴き始めました。雲が、その形を常に変え変容しながら歌っているのを聴きました。菌糸体ネットワークのあらゆる小さな粒子が、お互いに囁き合う音を聴きました。森の木の葉を風が吹き抜けるリズムが分かり始め、世界のあらゆる悲しみの叫び声を聞き、私は愛を、そして恐れを聞きました。私は、月と水を聞きました。そして、私は、最後に自分自身の音も聞きました。過去もそしてこれからも全てに織り合わされている、響きとしての自分の存在を。

 

2019年の夏、ペルーのアマゾンのジャングルで、1ヶ月間ほぼひとりで過ごしました。そこで、私の聴覚から西洋の習慣が更に取り除かれていきました。絶え間なく誕生する野生の命の息吹を、まさしく文字通り昼夜聴いて過ごしました。実際には、生と死を聴いていました。というのも、ジャングルではそれらはあたかもひとつのことのように素早く入れ替わるからです。私は、自分の聴力がどんどん研ぎ澄まされ、これまでは気が付かなかった複雑なリズムや音に気付いていくのを観察していました。滞在すればするほど、多くを聞きました。帰国して数か月後に、この体験をパリにいる神経科医に話しました。彼女の話では、工業化された環境は苦痛となるノイズを生みだすため、脳への過度で不要な刺激を取り除く神経学的プロセスを、人は何年もかけて発達させるそうです。聴覚を保護するための、耳栓と同じ働きだそうです。ジャングルで、私は、このフィルターのメカニズムを徐々に解放していける程、安心していたのでしょう。新生児のように聴くために必要な安心感を得るために、私は、遠く離れたジャングルの奥深くまで旅をしなければいけなかった事実に、笑ってしまいました。

 

​ベルニンにて

Earth Rhythms:

 

Ayumi Paul, Video still, Earth Rhythms (28 min.), 2020 © courtesy of the artist

 

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