Chansons de Lea LU | Flat magazine
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繋がり直す

LEA LU

​シンガー、作曲家、ミュージシャン、画家

私は歌い、絵を描き、文章を書きます。

私が覚えている最初の印象は音楽です。私の耳は時として私の眼になります。私は、フォルムと色を、複数の次元で見ます。

6歳の時に、曲を書き始めました。音楽が私の第一言語でした。音楽が私の母国語だとも言えます。私にとって、常に言語よりも音で自分を表現する方がずっと楽でした。音楽を聴いていると、自分の内なる目を通して色が見えてきます。のちに、この現象が「共感覚」と呼ばれていることを知りました。2つの知覚がより繋がっている時におきます。2万人に1人が共感覚を持っているという人もいれば、誰しもが共感覚を持って生まれてくるけれど、ペースの速い外界とのコンタクトで、この感覚を失っていくという説もあります。

 

 

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自分の曲はどこから来るのだろうとよく思います。私から出てくるものではありません。私に来るのです。私が私自身と繋がった時に。

自分自身と繋がっている時にだけ、自分の感情やニーズを感じ取り、自分の内なる羅針盤を見つけ、そして、内なる嵐を乗り越えることが出来ます。嵐はひとつではありません。それを受け入れて耐え、自分自身でいることを学ぶために、嵐はどこから来るのか、そして、嵐の中をどう航海していくのか、を知ることが大切です。自分が誰であるのかを知る唯一の方法です。

創作している時、自分自身に近づいています。私は自分と繋がり、内観していながら、大空のように広く、そして川のように動いています。自分を明け渡した時、歌が私の方に舞い上がってきます。自分を開放するとき、全てに開放します。それは、時には痛みを伴います。痛みは原動力となり、ともすると、促進剤になります。蓮の花は泥の中から生まれます。音楽は闇の中で輝きます。

去年、パリのCité des Arts Internationale(パリのアーティストレジデンス)に4か月間滞在しました。滞在中は作曲に専念したいと思っていました。

30曲ほど製作した後、突然、曲が降りてこなくなりました。伝達経路が閉じました。そして、今度はもうひとつの経路、絵画が開きました。そして、狂ったように徹夜で描き続け、数週間で200枚の絵画を描きました。私は、いつも受け入れなければいけません。創作を計画することは出来ないのです。自分を開放することしか出来ないのです。多くを創作した後は、自分がからっぽでいて、かつ、満たされた気持ちになります。疲れを感じたことはありません​。

 

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私にとって、音楽制作において一番大切なことは、そこから生まれる出会いです。

音で語り合うこと。言葉の制約なしに繋がる音楽。

音楽は、感情の表現のように、自分の内側から出てくる時、ユニバーサルな言語だと思っています。感情の言語は、皆が話し、知っている言語です。歌詞が理解できなくても、悲しい歌が悲しい歌であると、誰もが分かります。

最新のEP『Rabbit』では、繋がり直すことに立ち返りました。音楽シーンでのキャリアにおいて先を急いでしまい、よくない方向性を選んだ後だったので、このテーマが重要でした。自分を見失ったところに戻ることが出来たからです。そして、自分自身との繋がりを取り戻すことが出来ました。

そこから、他者とのつながりを取り戻し、外に出たいという欲求が生まれました。孤独を通っての出会い。この感情から、新しいアルバムが生まれました。この春の外出制限中に、素晴らしいジャズドラマーのClaudio Strübyと、特に目標を定めず、自宅の地下にあるリハーサルルームで楽曲を録音し始めました。そのあと、尊敬するミュージシャンのMockyが加わり、ロスのスタジオでベースラインを録音したものを送ってくれました。Nils Wogram、Andreas Tschopp、 Shems Bendaliなどの素晴らしいジャズミュージシャンと一緒に、スイスのアルプスにある家で即興曲をレコーディングしました。全員が同じ場所に居なくても、共同制作のようでした。これが今回のアルバムのテーマです。

 

国境や言葉を超越する繋がり。結局、重要なことはそれなのです。新しいやり方で再び出会い直し、そして異なる視点から真実に近づいていくための出会い。

私達は皆、海なのです。私達は、海を内包していて、波を立てるのです。

そして、太陽の下で輝くのです。

新しいアルバムは2021年3月にリリース予定です。

 

 

​チューリッヒにて

Photo by Claudio Strüby

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