Porcelaine d'Arita par Bunsho-Gama| Flat magazine
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石のハナシ

 

馬場 光二郎

私は九州の佐賀県伊万里市という場所に生まれそこで仕事をしている。

私の仕事は星(地球)を器にする仕事。

地球という器に暮らす、ヒトが営みの中で使う器を日々作っている。

今回はその仕事について話ていきたいと思っている。

まずは隣町の有田町にある「泉山」に眠る

一番大切な原料について。

2022年現在、伊万里焼や有田焼を含む肥前地区で焼かれる白磁の原料は熊本県の天草市で産出される奇跡の石「天草陶石」明治期から大正期にかけてここ肥前地区に本格的に入ってくるようになりました。

日本で作られている白磁の原料のうち8割以上がその天草陶石がベースで、言ってみれば天草陶石はそれほど素晴らしい原料なんだという事です。

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でも

熊本県の原料をなぜわざわざ伊万里で?

ここがいちばん疑問に思った事で

それなら私がアメリカにいても南アフリカにいても、、どこにいたって良いよね?

ココ(伊万里)で使う意味ある?と。

とにかく白く素晴らしい石で、それを加工して粘土にするスペシャルな技術を持った

粘土屋さんがたくさんいらっしゃる。

でも

せっかく伊万里という場所にいて白磁を作っているのなら、日本の白磁始まりの地である隣町の有田町で産出される泉山陶石を原料とする白磁を作ることこそ私がここ伊万里市で焼物を作る意味を

そして、自然破壊をしてまで器を作る意味をもたらしてくれる

作っても良いんだって腑に落ちる感覚なのです。

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私は石を掘る時に「石の顔」を見て選ぶようにしている。

簡単に言えば「白さ」「可塑性(粘り気)」「耐火性」を見極める。

誰に習った訳ではないが、石が語りかけてくれる(気がしてる)。

だがしかし

しかしである

見極めることはするが、最終的に選別せず全部掘る事にしている。この採石場(泉山)が発見され、ここの原料を使った事により日本で初めて白磁の器が作られるようになってから400年。

数々の要因により現在は産業としての機能は果たしておらず、ほぼ閉山している状態なのだが原料の埋蔵量はまだ心配なさそうではあっても400年後の人たちへ残さないといけないとの思いから、良い石もあまり良くない石も等しく採掘することにより山の寿命を延ばすことに繋がるからである。

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今の肥前地区の粘土の作り方に疑問があり

ずっとやりたかった生成方法がある。

とにかく精製しない事。

私の器作りにおいて、石そのものが純粋であるという考えによりそもそも精製する必要がない。

私の仕事は環境破壊である事に間違いなく、1億年くらいの悠久の時の中で育まれた自然の石を器にするため掘って砕いて焼いてと、もう二度と元の形へは戻らないようにすること。

その行為を否定することはないが掘ってくる石に対してきちんと責任を持ちたいとの想いと同時にご購入下さる皆さまに対してもちゃんと責任を持ちたいという考えから棄てない方法を考え実践している。

そうやって完成させた粘土が約60kgある。

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竹籠を背負ってケモノ道を登り辿り着くそこは史跡である。

江戸時代そのままに保存された景観を損なわないよう道具を使った採掘はせず落ちている石を拾い集め土嚢袋へ詰めそのまま両手で抱え持ち、その逆サイドではもっと多い量を竹籠へ詰め込み背負ってまた先程の一歩踏み間違えると谷底へ滑落してしまう危険な細いケモノ道を一歩一歩慎重に降りて持ち帰ってきた貴重な石たち。

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有田焼創業当時の石を使った日本の白磁の原点を体感するロマンに満ち溢れた器。

そうやって紡ぎ出されるモノづくりのストーリーはかけがえのないバックボーンとなり、

魅力を高め皆さまの生活に彩りを与えれる存在と成り得るような器を作る。

 

この60kgの粘土を活かすも殺すも私次第。

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伊万里にて

文祥窯

 

馬場 光二郎

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